循環器内科

人の身体では、生命を維持するために絶えず血液が循環しているわけですが、この循環に関係する器官である心臓や血管などに異常や病気がみられるという場合に専門的に診療していくのが循環器内科です。

当診療科を受診される患者様によくみられる症状としては、動悸や息切れ、めまい、胸が締めつけられるように痛む、背中が痛い、血圧が高いなどです。また、対象となる病気としては、以下の病気などがあります。

高血圧症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心臓弁膜症、心筋症、不整脈、動脈硬化、大動脈疾患(大動脈剥離、大動脈瘤 等) など

なお循環器内科では、診断をつけるために以下の検査をよく行います。

心電図検査

一口に心電図検査と言いましても種類はいくつかあります。その中でもよく行われるのが12誘導心電図です。これは健康診断の検査でもみられるものですが、胸部や胸、足首に電極を装着します。これによって、心拍のリズム(不整脈の有無)、心臓の筋肉(心筋)の異常などを調べます。検査時間については数分です。その結果、診断を確定する検査が必要となれば、さらに詳細な検査を行うこともあります。

超音波検査

耳では聞き取ることができないとされる高い周波数の音(超音波)を用いて行う画像検査になります。検査時は超音波診断装置から調べたい部位に向けて超音波を発信し、返ってきた反射波(エコー)を同装置がキャッチします。そしてコンピュータによって解析されるなどして、確認したい部位の画像から異常の有無などが確認できるようになります。なお心臓の部位を調べる超音波検査は、心臓超音波検査(心エコー)と呼ばれ、心臓の形や大きさ、動き、血管狭窄の程度、心臓にある4つの弁の状態などをみていきます。

ホルター心電図

携帯型で持ち運びが便利で、心電図を24時間記録し続ける可能とされる測定装置です。短い時間の心電図検査では確認できない不整脈などを見つけるのに最適とされる検査になります。

血圧測定

血圧計を用いて、高血圧の状態にあるかどうかを調べる検査になります。検査時は、椅子に座った状態で、上腕式であれば左右どちらかにカフを巻き、カフに向けて空気を送ることによって血管を圧迫します。この状態で、収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)を測定していきます。

血液検査

採血による検査のことをいいます。重篤な病気である心筋梗塞や動脈剥離等の発症のきっかけとしては、動脈硬化の促進が挙げられます。この場合の原因としては、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症 等)の罹患によるものが大半です。血液検査では、これらに関係する、血糖値、LDL/HDLコレステロール値、トリグリセリド(中性脂肪)値などを測定することができます。

循環器内科でよくみられる代表的な疾患

狭心症

心臓(心筋)には冠動脈と呼ばれる血管を通じて血液が送られますが、同血管の内腔にコレステロールが付着するなどして狭窄し、十分な血液(酸素や栄養素が含まれる)が送れないことで、様々な症状がみられている状態を狭心症といいます。

血管が狭窄する原因としては、動脈硬化の促進が大半です。ちなみに動脈硬化の原因の多くは、生活習慣病の罹患によって引き起こされます(労作性狭心症、不安定狭心症)。上記以外の原因としては、血管狭窄はみられないものの、冠動脈がけいれんを起こすなどして一時的に血液が不足してしまう冠攣縮性狭心症というのもあります。

よくみられる症状は、締めつけられるような胸の痛み、息切れや呼吸困難などです。多くは運動をしている際に起きるとされています。

心筋梗塞

冠動脈から心筋への血液供給が突然止まってしまい、その状態が20分を経過してもなお続いていると心筋梗塞と診断されます。放置が続けば心筋は壊死していきますが、一度壊死してしまうと元の状態に戻ることはないです。発症のメカニズムに関してですが、冠動脈内にできた狭窄部位に血栓が詰まるなどして血管閉塞が起きます。そこから先に血液が行き届かなくなって様々な症状が現れるようになります。

主な症状ですが、激しい痛みが胸部にみられます。また強い痛みが胸部だけでなく、肩や首、腕などにみられることもあります。さらに冷や汗や吐き気のほか、壊死の範囲が広がるようになれば、意識消失がみられ、場合によっては死に至ることもあります。

発症の原因に関しては、冠動脈の動脈硬化の促進によるものです。ちなみに動脈硬化を引き起こすきっかけの多くは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症等、生活習慣病に罹患している、喫煙といったものです。

不整脈

心臓の拍動というのは、規則正しいリズムで打たれています。ただ、このような一定のリズムよりも拍動が速い、もしくは遅い状態にあると判定されると、不整脈と診断されます。

ちなみに成人の安静時の心拍数は、個人差はありますが1分間に60~100回くらいとされています。この間に治まらないとなれば不整脈が疑われますが、心臓の拍動が1分間に50回未満であれば徐脈、100回以上あるという場合は頻脈と診断されます。上記以外にも、脈が飛ぶ感覚になる期外収縮(本来の心拍リズムよりも前に脈が打たれることで、脈が乱れている状態。心筋梗塞や心筋症、心臓弁膜症等の心疾患が原因なこともあれば、自律神経の異常(カフェインやアルコールの過剰摂取、ストレス、睡眠不足 等)で起きることもある)というのもあります。

よくみられる症状ですが、頻脈であれば、動悸をはじめ、冷や汗、吐き気などがみられるほか、めまいや意識消失が起きることもあります。徐脈では、息切れやめまい、疲労感、目の前が真っ暗になって血の気が引くなどの症状がみられます。

主な原因ですが、頻脈に関しては、運動後や緊張によって起きることもあれば、カフェインの過剰摂取、精神的ストレス、睡眠不足、発熱等で引き起こされることもあります。原因疾患としては、甲状腺疾患(バセドウ病等の甲状腺機能亢進症)、貧血のほか、心臓の異常(心房細動、心房粗動、心室細動、心室頻拍、発作性上室性頻拍 等)が挙げられます。徐脈の場合は、加齢による心機能の低下というのがあります。また心筋梗塞をはじめとする心臓病、代謝異常などが原因になることもあります。そのほか薬剤の影響もあります。

心臓弁膜症

心臓には血液の流れが一方向へスムーズに流れるよう4つの弁(大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁)が備わっています。これらの弁が何らかの原因によって異常をきたすようになると心臓から血液の流れが悪くなるなどして、様々な症状が起こるようになります。これを心臓弁膜症といいます。

なお同疾患は、2種類のタイプがあるとされています。ひとつは狭窄症と呼ばれるもので、これは弁の開きが不十分なために血流の流れが妨げられてしまいます。もうひとつは、弁をしっかり閉められなくなることで血液が逆流してしまうとされる閉鎖不全症です。

発症の原因については、先天的に心臓の弁が変形しているケースもあれば、リウマチ熱の後遺症によって弁が変性することもあります。また加齢による弁の硬化から狭窄症や閉鎖不全症を発症することも少なくないです。また可能性としては低いですが、胸部を強く打つなど外傷によって弁が変形することもあります。

なお同疾患の発症でよくみられるのは心不全症状です。具体的には、息切れや呼吸困難、顔面や足のむくみ、倦怠感、易疲労性などです。

心不全

心筋梗塞や心臓弁膜症のように一つの病気をいうのではなく、心臓の機能が何らかの原因によって低下している状態を心不全といいます。この場合、心筋が規則的に収縮して弛緩するというポンプ機能が弱まっています。そのため十分な血液を送ることができずにうっ血が起き、全身の臓器や細胞に必要とされる酸素や栄養が不足し、様々な症状が現れるようになります。なお心不全には、心機能が急激に低下する場合を急性心不全、徐々に進行していく慢性心不全の2つのタイプがあります。

心不全を引き起こす原因ですが、心疾患が原因であれば、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心筋症、心筋炎、不整脈、先天性心疾患などが挙げられます。また上記以外では、高血圧、腎不全等の腎臓病、バセドウ病等の甲状腺機能亢進症、貧血などによって引き起こされることもあります。

よくみられる症状は、動悸、息切れ、疲れやすい、足のすねや甲にむくみ、体重の増加などです。症状に心当たりがあれば、一度ご受診ください。